伝統と豊かな自然が育んだ癒しのまち「山鹿」をめぐる
豊前街道で情緒ある山鹿を体感
江戸時代、豊前街道を中心に参勤交代の宿場町として栄えた歴史がある山鹿市。
豊前街道は、熊本市を起点として北上し、山鹿市を経由して北九州市へと続く道で、現在も、白壁土蔵造りの商家が1キロ以上も軒を連ね、八千代座、さくら湯、山鹿灯籠民芸館などの観光スポットや、カフェ、洋食、和食、スペイン料理、ピザ、雑貨店、造り酒屋等、多彩な店が豊前街道を彩っている。風情ある街並みを散策するのも楽しみだ。
「豊前街道」で特に見ておきたいのが、1910(明治43)年に建てられ、国の重要文化財にも指定されている「八千代座」。旦那衆と呼ばれていた山鹿の実業家たちが資金を出し合って建てた芝居小屋で、外観から風情満点。施設内に入って目を見張るのが、天井一面に描かれた極彩色の再現広告の数々。中央で輝く復元された真鍮製のシャンデリアも必見だ。
細部もドイツ製のレールを使った廻り舞台、枡席、花道など見どころいっぱい。江戸時代の歌舞伎小屋の様式を今に伝える貴重な建築物として全国的に知られ、現在も歌舞伎や郷土芸能などの公演が開催されている。
「八千代座」のそばには、白壁土蔵造りの資料館「夢小蔵」も。芝居で使った小道具約200点を中心に、坂東玉三郎さんが舞台で実際に着用した着物、八千代座公演のポスター・チラシ、映写機、興行記録などを展示しているので、芝居小屋の歴史をより深く知る意味でも合わせて見ておきたい。
豊前街道沿いでひときわ目を引くモダンな建物は「山鹿灯籠民芸館」。1925(大正14)年に建てられた銀行を改造した建物で、館内には室町時代に金灯籠から始まったと伝わる伝統的工芸品「山鹿灯籠」の歴史や職人の匠の技に触れることができる。
山鹿灯籠というと、「山鹿灯籠まつり」で女性が頭に掲げる金灯籠のイメージが強いが、実は建造物をモチーフにした作品こそが灯籠師たちの腕の見せどころ。座敷造り、神殿造り、城造りなど、実在の建造物を独自の寸法で表現しており、間近で見るとその精密さに思わず目を見張る。しかも、木や金具は一切使わず、和紙と少量ののりだけで作られているというから、ますます驚きだ。
灯籠民芸館では、実際の和紙を使い、代表的な技法を体験することができる。また豊前街道では山鹿市旅先案内人のガイドで、歴史を聞きながらゆっくり散策を楽しむこともできる。
毎年8月15日、16日の2日間にわたり催される、九州を代表する夏祭り「山鹿灯籠まつり」。頭に金灯籠を掲げた浴衣姿の女性たちが、情緒漂う民謡「よへほ節」にのせて舞い踊る、千人灯籠踊りは見どころだ。
2021年は新型コロナウイルス感染症拡大により中止となったが、2022年は開催を予定しており、例年通りであれば、千人灯籠踊りに加え、花火大会、ステージイベントなども催される予定だ。現在、踊り手として参加する女性も募集中なので、興味がある人はぜひチェックしてみよう。
手塩にかけて育てる 極上の山鹿のお茶
肥後藩主にも愛された 山鹿のお茶を味わう
茶どころとして名高い福岡県八女市と、山を隔てて隣接する山鹿市も実は上質なお茶の産地としてお茶好きのあいだでは知られた存在だ。
お茶が多く栽培されているのが、豊かな自然が広がる鹿北町と菊鹿町エリア。ここ数年、日頃の喧騒を忘れてリフレッシュするのにピッタリと人気が高まっている。中山間地と呼ばれるこのエリアは、寒暖の差が大きいことから、うまみ成分たっぷりの茶葉が育つ土地柄だ。また、うまみ成分を渋みに変えてしまう日光が当たりにくい環境で栽培するなど、自然の条件以外にも携わる人たちの努力によって毎年高級茶が生産されている。
山鹿での茶栽培の歴史は古い。江戸時代の初期まで遡り、肥後藩主、細川忠利公御用達のお茶として愛されていた。その茶産地としての実績から国の輸出産業として紅茶製造の取り組みを行う明治8年に、日本で最初の紅茶伝習所が設立されたという国産紅茶発祥の地でもある。
山鹿市の茶店舗は、『自園・自製・自販』が中心。自分たちが栽培した茶葉を自分たちで加工し、売るという国内でも稀有な産地である。その茶を栽培製造販売する店舗は以下。
九州でもほとんど生産されていない希少なギャバロン茶(GABA含有量を高めたお茶)で注目の『小山製茶』、鹿北と菊鹿エリアの茶葉を鹿本銘茶として製造販売する『JA鹿本茶販売所』、自家栽培の菊芋を使った菊芋ごぼう茶やハーブティー等も手掛ける『フルタ製茶』、心潤す一杯がモットーの『岳間の郷ひがし』、5年の歳月をかけて幻の山鹿紅茶を復刻した、山鹿復刻紅茶の生みの親『藤本製茶』、岳間地域特有の地形を生かした岳間茶づくりを追求する『岳間製茶』、お茶だけでなく大麦若葉商品や化粧水等の製品にも力を入れる『佐とう製茶』の全7店舗。店舗が連携して開発した『ギャバロン紅茶(5店舗で販売中)』は、世界初で、どこを探してもここにしかない。
手塩にかけて愛情かけて育てられたお茶は、生産者の数だけ、異なる魅力、味わいを持っている。7店舗のお茶の種類はさまざまあり、おすすめの淹れ方も教えてくれる。いろいろな味わいを楽しめるので、のどかな景色に癒やされながら、自分だけのお茶の楽しみ方をぜひ見つけてほしい。
鹿北町の春ならではの楽しみといえば、「鹿北たけんこ街道」も忘れてはいけない。山鹿市は熊本県内で一番の生産量を誇るたけのこの産地で、とくに鹿北町のたけのこは赤土の土壌と、ミネラルたっぷりのおいしい水で育まれており、掘りたては生でも食べられるほどえぐみが少ないのが大きな特徴。約200名のたけのこ農家がおり、竹
渓谷美に癒される秘境のキャンプ場
岳間渓谷キャンプ場で 手軽にアウトドア体験を楽しむ
キャンプ場近くには地元でもおいしいと人気の水汲み場「湯の水公園」、「冷や水湧水 小川内水汲み場」も。湧水を汲んで、キャンプ場で雄大な自然に囲まれながら岳間茶をゆったり味わうなんて楽しみができるのも、ここならでは。毎年4月下旬〜5月上旬はキャンプ場内に自生した約250本のシャクナゲが開花するベストシーズン。この春、鹿北町エリアの豊かな自然を体感しに、「岳間渓谷キャンプ場」へぜひ。
泉質がよく豊富な湯量を誇り、古くは1300年の歴史がある「やまが温泉郷」。山鹿温泉のほか、平山温泉、菊鹿温泉、熊入温泉、鹿本温泉があり、多くの温泉旅館や立ち寄り湯、また家族湯などが点在してる。